日本エネルギー学会誌
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特集:JCREN Ⅲ(論文)
Computational Fluid Dynamics Simulation and Energy Consumption Analysis of Metal Hydride in Its Hydrogen Charging Process
Daisuke HARA Chiharu MISAKINoboru KATAYAMAKiyoshi DOWAKI
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2021 年 100 巻 12 号 p. 294-300

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抄録

本研究は,将来の環境対策の一環としてバイオマス由来の水素を貯蔵し,様々なアプリケーション(燃料電池アシスト自転車,ドローン,定置用等)に適用する事が有望視されている事を鑑み,水素吸蔵合金を利用した水素貯蔵タンクについての解析を行った。水素吸蔵合金とは水素と可逆的に反応する合金である。水素吸蔵合金は,水素の貯蔵時圧力が低いため,安全性向上や水素充填時の圧縮動力の低減に貢献可能である。一方で,水素吸蔵合金への水素充填時の発熱反応による温度上昇が原因となり反応速度が低下するため,水素の充填時間が長くなり,運用面での不便さが生じてしまう懸念がある。その対策として,水素吸蔵合金を冷却し,反応速度の大きくする事が有望視されている。

このような背景を踏まえ,本研究では環境負荷低減を目途に,水素吸蔵合金と圧縮水素(現在主流の水素貯蔵方法)の水素充填時の圧縮動力の比較を行った。また,水素充填時間が長いという運用面における懸念点の解消を目途に,水素吸蔵合金への水素充填プロセスの非定常2次元数理モデルを開発し,異なる冷却温度条件下(タンク周囲温度:233,253,273,298 K)でのシミュレーションを行う事で,水素吸蔵合金の冷却が水素充填時間に及ぼす影響を評価した。その結果,水素吸蔵合金を利用した水素貯蔵は,従来の圧縮水素に比して,水素充填時の圧縮動力を最大で7.57 kWh/kg-H2低減する事が示唆された。また,水素吸蔵合金タンクから反応熱を除去することで,水素充填時間を短縮できることが示唆された。例えば,タンクの周囲温度273 Kのとき,水素充填時間(水素貯蔵量: 最大水素貯蔵量の70%)が1,902秒であったのに対して,886 s(周囲温度:233 K)まで短縮できるという知見を得た。

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© 2021 The Japan Institute of Energy
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