2021 年 100 巻 3 号 p. 13-21
石炭火力発電所における空気予熱器の差圧上昇の主要因と考えられる硫酸アルミニウムアンモニウムの生成に与える,アルカリ化合物の影響に関する基礎的な検討を行った。石炭燃焼排ガスを想定した条件での熱力学平衡計算により,空気予熱器の内部で硫酸アルミニウムアンモニウムが生成し得ることを示した。CaやNa等のアルカリ成分を計算条件に含めた場合,アルカリ硫酸塩が生成するため硫酸アルミニウムアンモニウムの生成量が減少した。石炭灰,硫酸,硫酸水素アンモニウム,少量の水の混合物を空気予熱器の出口温度に相当する150℃で加熱することにより,硫酸アルミニウムアンモニウムを実験的に合成した。これらの合成原料にCaやNaを含むアルカリ化合物を加えたところ,計算結果と同様にアルカリ硫酸塩が生成し,硫酸アルミニウムアンモニウムの生成量が減少した。しかしながら,Na の添加量が不十分な場合,硫酸ナトリウムではない固着性の高い反応生成物を生じた。