北ヨーロッパ研究
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論文
「主婦」から「子ども」の国へ
ノルウェーにおける戦後育児政策の変遷
古市 憲寿
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 8 巻 p. 53-62

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抄録

本論文は、ノルウェーにおける戦後育児政策を検討するものである。1960年代までノルウェーは「主婦の国」 と呼ばれており、労働力不足であったはずの戦後復興期にも女性が労働力として注目されることはなかった。しかし1970年代以降、パブリック・セクターの拡大に伴い、母親を含めた女性の労働市場への進出が本格化、「主婦」というカテゴリーは失効していく。そこで前景化したのが 「子ども」である。近年は現金による育児手当など、「主婦」ではなく「子ども」の価値を強調することによって、男女の性差を前提とした政策が実施されている。それは、国家フェミニズム成立時の「母親」と「国家」の同盟が、ノルウェーにおいては男女の差異を前提として成立したためだと考えられる。

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2012 『北ヨーロッパ研究』に掲載された著作物の著作権は,著者に帰属するものとします.
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