2021 年 100 巻 9 号 p. 177-185
石炭の化学構造に基づく,揮発分の発生挙動把握は,石炭ガス化炉内部の反応挙動を明らかにするために重要である。しかしながら,石炭の13C-NMRデータの評価方法と,Chemical Percolation Devolatilization (CPD)理論に基づく石炭の構造パラメータの関係に着目し,高圧流通管式反応実験装置(高圧DTF)で取得した揮発分の発生挙動と比較した報告は少ない。本研究では,燃料比0.94と1.64の石炭について13C-NMR分析を行い,高圧DTFで取得した温度800~1200℃,滞留時間0.4~0.8 sの揮発分の発生挙動データを基に,石炭の化学構造に対する考察を行った。その結果,橋頭炭素の化学シフトピークをそれぞれ133 ppm,131 ppmに設定することで,CPD理論に基づく計算結果と,高圧DTF実験で取得した揮発分放出量の相関が取れた。炭種による化学シフトピークの違いは,芳香核クラスタを構成する炭素環数の差に起因すると考えられ,化学構造の違いに応じて13C-NMRデータ分析のパラメータも調整する必要があることが分かった。