2023 年 102 巻 8 号 p. 84-95
本研究の目的は,オイルパーム空果房(EFB)ペレットから供給される5%のエネルギーを,石炭火力発電所で混焼した場合の排出削減ポテンシャルを分析し,炭素価格を組み込んだ買取価格を算出することにある。本研究で用いたライフサイクルアセスメント(LCA)では,機能単位として電力1 kWhとした。また,対象範囲は原料の収集,ペレットの製造,原料の輸送,発電とした。フォアグラウンドのインベントリ分析は,文献からの関連背景データを用いるとともに,ケーススタディとしてインドネシアのチビノンにあるペレットパイロットプラントから収集した。その結果,混焼用としてペレットに変換されたオイルパームバイオマスを利用することは,地球温暖化係数(GWP)緩和のための有望な解決策であり,発電所において0.1 kg-CO2eq/kWh,8.57%のCO2eq排出量を削減できることが示された。また,5%混焼の場合,典型的な500 MWの発電所では,87,118 tの石炭を代替するために112,940 tのEFBを利用できる。よって,EFBを利用することで,発電所において年間0.285 Mt CO2eqのGHG排出を削減できることが明らかとなった。さらに,排出削減によって節約された炭素税は,ペレットの購入価格を65.34 USD/t(現行比9.83%増)まで引き上げ,競争力を高めるために利用できることが明らかとなった。