2016 年 95 巻 10 号 p. 881-889
熱分解ガス化発電システムの効率向上を図るため,木質バイオマスの熱分解反応の量論的解析をもとに熱分解炉の熱収支を明らかにした。巨大分子を単位組成式で表し,木質バイオマスの熱分解を総括的な量論式で表記し,里中が報告した木質試料の熱分解データを解析し,熱分解の反応熱を算出した。また,生成物が熱分解温度で熱分解炉から持ち出す顕熱と装置からの放熱量を算出し,熱分解における装置周りのエネルギー収支を明らかにした。乾燥木質試料を773〜1373 Kで熱分解する場合,発熱反応であった。しかし,生成物の持ち出し顕熱や潜熱と装置からの放熱の熱量を補うための外部加熱が必要であるとの計算結果が得られた。供給試料に湿分が含まれる場合や,熱分解で副生する炭化物を外部加熱に利用した場合の熱収支も算出した。