日本エネルギー学会誌
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95 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
投稿論文
特集:バイオマス(論文)
  • Yoichi KODERA, Mamoru KAIHO
    2016 年 95 巻 10 号 p. 881-889
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    熱分解ガス化発電システムの効率向上を図るため,木質バイオマスの熱分解反応の量論的解析をもとに熱分解炉の熱収支を明らかにした。巨大分子を単位組成式で表し,木質バイオマスの熱分解を総括的な量論式で表記し,里中が報告した木質試料の熱分解データを解析し,熱分解の反応熱を算出した。また,生成物が熱分解温度で熱分解炉から持ち出す顕熱と装置からの放熱量を算出し,熱分解における装置周りのエネルギー収支を明らかにした。乾燥木質試料を773〜1373 Kで熱分解する場合,発熱反応であった。しかし,生成物の持ち出し顕熱や潜熱と装置からの放熱の熱量を補うための外部加熱が必要であるとの計算結果が得られた。供給試料に湿分が含まれる場合や,熱分解で副生する炭化物を外部加熱に利用した場合の熱収支も算出した。

特集:バイオマス(技術論文)
  • 森 耕太郎, 山根 浩二, 小坂田 潔, 河﨑 澄
    2016 年 95 巻 10 号 p. 890-896
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    通称バイオディーゼル燃料と呼ばれている脂肪酸メチルエステル(FAME)は,高沸点のためエンジンの潤滑油に混入し,異常摩耗などの不具合を起こす原因となる。近年,Grubbs-II 触媒を用いたクロスメタセシス反応によりバイオディーゼルの蒸留特性を改質する研究事例が報告されている。そこで本研究では,PME,JME,RME,SME,WME という5種類のFAMEをクロスメタセシス反応させ,反応前後の組成や燃料性状の変化を実験によって調査した。クロスメタセシス反応は,FAME と1- ヘキセンを混合し,Grubbs-II 触媒と類似したUmicore M51を加えて,40℃一定のもとで行った。その結果,クロスメタセシス反応によりFAME の主成分であるC18:1,C18:2,C18:3 といった長鎖不飽和脂肪酸メチルエステルが中短鎖のメチルエステルに変化すること,反応後は低温流動性が向上するが酸化安定性は低下することなどが明らかになった。

  • 角田 雄亮, 滝口 翔, 石津 百啓, 伊藤 拓哉
    2016 年 95 巻 10 号 p. 897-901
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    近年,トウモロコシ,様々な樹木やサトウキビなどのバイオマスが効果的な化石代替資源として検討されている。その中で木質バイオマスの直接液化が広く研究されている。ここでは,溶媒として軽油を使用することで軽油の混合工程を削減可能な木質バイオマスの直接液化に関する簡便な方法を提案する。しかし,軽油溶媒を用いてスギを液化すると極性溶媒を使用する場合に比べて残渣が多く生成した。したがって,液化油を増加させるために残渣の生成メカニズムについて検討した。スギ由来の分解物同士が縮合することで残渣が生成されていることが判明した。このため,水素供与体としてテトラリンおよびプラスチックを添加した実験を行った。その結果,水素供与体の効果によって残渣生成が抑制されることが示唆された。さらに,液化油の量は増加して得られた。本研究では,軽油を溶媒として使用し,容易に利用可能な水素供与体を利用することで効率的にバイオマスから液化油を生成する新たな方法を提示する。

特集:バイオマス(ノート)
  • Kazusa YOKOYAMA, Hisashi MIYAFUJI
    2016 年 95 巻 10 号 p. 902-908
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    リグノセルロースから得られる5-ヒドロキシメチルフルフラールやフルフラールなどのフラン化合物は,ポリマーや液体バイオ燃料の原料として利用できる重要な化学物質である。近年,グルコースやキシロースのイオン液体処理によるフラン化合物の生成に関する研究が行われている。本研究では,様々なイオン液体を用いた,稲わらからフラン化合物生成に関する研究を行った。1-メチルイミダゾリウム硫酸水素塩([MIM]HSO4)は,稲わらからのフラン化合物生成に最も効果的なイオン液体であることが分かった。反応温度が160℃,[MIM]HSO4に対する稲わらの仕込み濃度が1 wt% のとき,5-ヒドロキシメチルフルフラールとフルフラールがそれぞれ7.9 wt%,4.3 wt%の収率で得られた。また,イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートによる前処理は効果的であり,前処理後の稲わらを[MIM]HSO4処理すると,フラン化合物の収率は増加することが明らかとなった。

特集:バイオマス(資料)
  • Hirokazu ISHITOBI, Daiki NAITO, Yurina INO, Masaya YAJIMA, Nobuyoshi N ...
    2016 年 95 巻 10 号 p. 909-914
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    リグノセルロース系バイオマス由来のバイオエタノールに含まれる不純物による,直接エタノール燃料電池における電流密度の低下を評価した。9種の不純物(メタノール,アセトアルデヒド,酢酸,1-プロパノール,アリルアルコール,酢酸エチル3-メチル-1-ブタノール,アセタール(アセトアルデヒドジエチルアセタール),ベンズアルデヒド)が電池の電流密度に与える影響を調べた。上記9種の不純物を含む2 M 模擬バイオエタノールを電池に導入したところ,電流密度が低下した。主要な被毒物質を特定するために各不純物について評価を行い,アリルアルコールが主要な被毒物質であることを明らかにした。一方で,その他の不純物からの被毒などの悪影響は,バイオエタノール中に含まれる濃度において無視可能であった。

  • 服部 育男, 加藤 直樹, 上床 修弘, 我有 満, 清村 康
    2016 年 95 巻 10 号 p. 915-921
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    水分を多く含む草本類のエネルギー利用においては,原料貯蔵技術の確立が必要である。そこで,本試験では低コスト貯蔵を目的としたエリアンサスの野積み貯蔵試験を実施した。設定切断長15 mmで細断した含水率492 g/kgのエリアンサスをベルトコンベアーを用いて野積みしたところ,半径5 m高さ5 mの正円錐状に積み上がったが,貯蔵開始時から頂部は沈下し,翌日には高さ3.5 mとなった。このときの密度は原物で259 kg/m3,乾物で132 kg/m3であった。貯蔵中の温度変化は表層部では最低気温より約10℃高い値で推移した。中心部および底面部は約20℃高い値で推移したが,温度変化は外気温の影響を受けなかった。貯蔵後のpHは中心部では5 以下となったが,他の位置は7前後の中性域であった。有機酸はpHが低下した中心部で多く認められた。貯蔵後の総炭水化物および高位発熱量の成分,回収率は中心部が高く,表面になるほど成分,回収率ともに低下した。上記条件下での回収率は総炭水化物では約70%,高位発熱量では約75%の回収率であった。

技術論文
  • 原 聖人, 井上 裕太, 伊藤 響, 二宮 善彦, 波岡 知昭
    2016 年 95 巻 10 号 p. 922-929
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    Ni-CeO2ナノコンポジット微粒子を固体酸化物形燃料電池の電極触媒として用いたシングルセルに,微量のモデルタールが混入した燃料ガスを供給し,その際の発電性能の変化や燃料極構造の変化を評価した。Ni にCeO2を添加することで炭素析出耐性は向上した。発電中の燃料電池にモデルタールの混入した燃料ガスを供給したところ,複数回にわたり電圧が矩形関数状に変動し,さらに実験後の燃料極表面のNi 含有量が減少することがわかった。しかし,電極触媒中のCeO2含有量を増加させることで,電圧変動の頻度やNi 含有量の減少幅を低減させることができた。これはCeO2添加によりタールの水蒸気改質反応が促進され,その結果微量タールに起因する燃料極劣化を抑制することができたためだと考えられる。モデルタール濃度が20 g/Nm3,かつ,電極触媒へのCeO2添加量が20 mol.%の場合,電圧変動も燃料極表面のNi含有量の減少も観察されなかった。以上のことからNi-CeO2ナノコンポジット電極触媒はバイオマスガス化ガス駆動燃料電池用の電極触媒として実用化の可能性のある材料であることがわかった。

  • Fumio HASEGAWA, Hiroyuki INOUE, Shinichi YANO, Shinya YOKOYAMA, Kenji ...
    2016 年 95 巻 10 号 p. 930-936
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    セルラーゼによる酵素糖化は,環境負荷の少ないセルロースの糖化方法として期待されているが,そのコストの高さが課題となっている。そのため,酵素糖化のコスト削減に向けた研究が数多く行われ,酵素のリサイクルは酵素糖化のコストを削減する有効な方法の一つと考えられている。本研究では,酵素糖化後の固体残渣に残る酵素の効率的なリサイクルを目指し,酵素糖化後の固体残渣に残存する酵素活性を測定する方法を提案する。本研究で提案した方法で固体残渣に残る酵素活性を測定した結果,糖化率70%の固体残渣には添加した酵素の70%の活性が,糖化率99%の残渣には22%の活性が残っていることが明らかとなった。また,酵素のリサイクルを想定した酵素糖化試験を行い,本研究で測定した結果からの予測通りに固体残渣から酵素が回収できることが確認された。

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