2016 年 95 巻 10 号 p. 897-901
近年,トウモロコシ,様々な樹木やサトウキビなどのバイオマスが効果的な化石代替資源として検討されている。その中で木質バイオマスの直接液化が広く研究されている。ここでは,溶媒として軽油を使用することで軽油の混合工程を削減可能な木質バイオマスの直接液化に関する簡便な方法を提案する。しかし,軽油溶媒を用いてスギを液化すると極性溶媒を使用する場合に比べて残渣が多く生成した。したがって,液化油を増加させるために残渣の生成メカニズムについて検討した。スギ由来の分解物同士が縮合することで残渣が生成されていることが判明した。このため,水素供与体としてテトラリンおよびプラスチックを添加した実験を行った。その結果,水素供与体の効果によって残渣生成が抑制されることが示唆された。さらに,液化油の量は増加して得られた。本研究では,軽油を溶媒として使用し,容易に利用可能な水素供与体を利用することで効率的にバイオマスから液化油を生成する新たな方法を提示する。