日本エネルギー学会誌
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論文
日本における小水力発電の普及に係る障壁と課題 ―事業主体の視点から―
井上 博成 KEELEY Alexander 竜太
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2018 年 97 巻 8 号 p. 245-251

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抄録

本研究は,日本における小水力発電の普及に係る障壁と課題について,事業主体の視点から明らかとすることを目的とする。筆者らが小水力発電事業実施地域に入り込み行ってきた参与観察及び小水力発電事業者への聞き取り調査とアンケート,そして先行研究を基に,小水力発電の普及に係る障壁と課題を事業主体の視点から8つ特定し,大きく次の3つのカテゴリーに整理を行った:政治的要因カテゴリー,技術・インフラ的要因カテゴリー,事業主体形成・計画・資金調達要因カテゴリー。 小水力発電事業者へのアンケートを基に,特定された各要因の重要度を,階層化意思決定法を用いて分析し,各要因の重み付けを行った。再生可能エネルギー全般において障壁となっている系統連系の問題に加えて,小水力発電には多くの許認可手続きの課題,地域住民との関わり方を含めた事業主体の形成の重要性,長期を要する開発期間の短縮のための事業計画の重要性等が確認された。これらの課題を踏まえた事業主体の形成,資金調達,そして地域住民や各種ステークホルダーとの調整を行っていくことがこれからの小水力発電の普及において重要であると考察される。本研究は,事業主体の視点に焦点をあてることによって,小水力発電の普及に係る障壁と課題を詳細に明らかにしている。

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© 2018 一般社団法人 日本エネルギー学会
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