本研究の目的は,日常生活の省エネルギー行動において,家庭内のコミュニケーションの影響を明らかにすることである。環境省は,各世帯に対して環境コンサルティングサービスを提供する「うちエコ診断」事業を平成23年度に実施した。本研究では,「うちエコ診断」を受診した613世帯に対し,家庭内のコミュニケーションの状況に関する質問(例:うちエコ診断受診後における省エネルギーのための家電の買い替えに係る家族との相談の有無)を含んだアンケート調査を実施している。そして,統計的手法を用いて,利用可能なデータ(613世帯のうち254世帯)を対象に分析を行っている。分析の結果,買替行動について家族と相談することや,日常的な省エネ行動について世帯員同士で注意し合うことが,うちエコ診断受診後の電力変化量に影響を与える可能性を見い出している。本研究は,家庭内コミュニケーションが日常生活の省エネルギー行動を促進する可能性を示しており,今後,より詳細な分析を行う必要性を指摘している。