2019 年 98 巻 9 号 p. 229-233
メタンガス生産のための嫌気発酵技術は広く実用化されており,原料に合わせた運転条件の設定が重要であることが知られている。ミドリムシ属Euglena gracilisは有用物質生産のために世界中で研究されており,E. gracilisの商業生産施設からは様々な状態の残渣発生が想定されるが,それぞれの嫌気発酵特性は一部が把握されているのみである。本研究では,E. gracilisの商業生産施設から発生したスラリー,乾燥細胞,脱脂乾燥細胞および精製パラミロンを原料とした嫌気発酵試 験を行った。メタンガス発生量はパラミロンが最も多く502.1 ml/g-TSで,スラリーの1.75倍であった。pHはすべての試験区で7.2-7.8以内でありメタンガス発生に適した範囲であった。アルカリ度はパラミロンが最も低く3.7 g-CaCO3/L,脱脂乾燥細胞で最も高く4.3 g-CaCO3/L 範囲であり,長期の嫌気発酵を行う場合は注意を要することが示唆された。