2020 年 99 巻 9 号 p. 129-135
水素は,地球温暖化の緩和に有望な二次エネルギーであり,特にバイオマス原料による水素製造は,原料のカーボンニュートラルという性質から,温室効果ガス排出の削減に貢献する。しかしながら,バイオマス原料のエネルギー密度が低いために,LCAの観点から,原料の収集範囲が制限されよう。このことから,プラント規模も小規模になるが,小規模なBio-H2プラントには2つの課題がある。1つ目として,補助電源の使用による生産効率の低下及び環境負荷の増大が想定される。特に,一般的に水素精製は圧力スイング吸着(PSA)により行われるが,この場合,水素生産量当たりの電力消費が大きくなる。また2つ目として,小規模であるために熱ロスの発生が大きい。本研究では,これらの課題を解決するために,当該Bio-H2プラントにおいて,技術開発を実施している2-step PSAの導入,及び廃熱回収システム(WHR)を導入することによる補助電源使用量の削減を試みることとした。その結果,水素生産効率の向上は1%ポイント程度であったが,所内電力需要のうち7.2%をWHRシステムによって賄うことができ,従来プラントと比較して,補助電源の需要を18.9%削減可能であることが分かった。さらに,LCAを行った結果,本提案において,全ての環境影響指標を改善できることが分かった。