日本エネルギー学会誌
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99 巻, 9 号
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目次
特集:アジアバイオマス科学会議Ⅰ(論文)
  • Haruka NAKAYAMA, Mitsuo KAMEYAMA, Yin LONG, Kiyoshi DOWAKI
    原稿種別: Original Paper
    2020 年 99 巻 9 号 p. 129-135
    発行日: 2020/09/20
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    水素は,地球温暖化の緩和に有望な二次エネルギーであり,特にバイオマス原料による水素製造は,原料のカーボンニュートラルという性質から,温室効果ガス排出の削減に貢献する。しかしながら,バイオマス原料のエネルギー密度が低いために,LCAの観点から,原料の収集範囲が制限されよう。このことから,プラント規模も小規模になるが,小規模なBio-H2プラントには2つの課題がある。1つ目として,補助電源の使用による生産効率の低下及び環境負荷の増大が想定される。特に,一般的に水素精製は圧力スイング吸着(PSA)により行われるが,この場合,水素生産量当たりの電力消費が大きくなる。また2つ目として,小規模であるために熱ロスの発生が大きい。本研究では,これらの課題を解決するために,当該Bio-H2プラントにおいて,技術開発を実施している2-step PSAの導入,及び廃熱回収システム(WHR)を導入することによる補助電源使用量の削減を試みることとした。その結果,水素生産効率の向上は1%ポイント程度であったが,所内電力需要のうち7.2%をWHRシステムによって賄うことができ,従来プラントと比較して,補助電源の需要を18.9%削減可能であることが分かった。さらに,LCAを行った結果,本提案において,全ての環境影響指標を改善できることが分かった。

  • Seiya KAKO, Masaya SUZUKI, Mitsuo KAMEYAMA, Yin LONG, Kiyoshi DOWAKI
    原稿種別: Original Paper
    2020 年 99 巻 9 号 p. 136-142
    発行日: 2020/09/20
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,環境負荷低減及び燃料電池の普及を勘案し,バイオマス原料を間接熱分解により生産されるバイオ水素の精製に着目した。バイオマス原料からの熱的処理により合成される生成ガスには,H2S,HCl 及びNH3などの不純物が含まれ,これらの不純物は,最終製品となる水素燃料が供給される燃料電池の性能を著しく低下させる。一方で,不純物を除去させる精製過程について,LCA(ライフサイクルアセスメント)視点により検討した場合,精製に伴う間接的なエネルギー投入だけでなく吸着材の環境負荷も大きな影響を与える。これらの緩和策を検討した場合,繰り返し利用が可能な吸着材の利用,もしくは,繰り返し使用ができない化学吸着であっても天然素材による吸着材の利用が候補となろう。したがって,本研究では,NH3の吸着性能に焦点を当て,人工吸着材であるHAS-Clay(Hydroxyl Aluminum Silicate Clay)とアロフェンを含む鹿沼土の2種類の吸着材に着目した。この2つの吸着材の性能を実験的に評価し,最大吸着量を評価した結果,HAS-Clayでは2.90 g NH3/100 gとなり,鹿沼土では2.02 g NH3/100 gとなった。また,これらの性能結果をもとに,LCA指標である地球温暖化指標及び資源枯渇性指標を検討した結果,いずれも鹿沼土の方が環境負荷低減につながることが示唆された。

特集:アジアバイオマス科学会議Ⅰ(技術論文)
  • Agusta Samodra PUTRA, Ryozo NOGUCHI, Tofael AHAMED, Hiroshi OHI
    原稿種別: Technical Paper
    2020 年 99 巻 9 号 p. 143-152
    発行日: 2020/09/20
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    近年,オイルパームの空果房(EFB)は,オイルパームプランテーションの有機堆肥の原料として利用されているが,EFBは豊富な炭素源物質であり,有機堆肥以外の用途に対する貴重な原料と考えられている。本論文では,環境影響評価(LCA),ライフサイクルコスト計算(LCC),累積エネルギー需要量(CED)を用いて,EFBを原料とした,溶解パルプとフルフラールの共同生産の実現可能性を評価した。さらに,コスト計算のために,現実的な産業規模のプロセス条件での技術経済評価を実施した。EFBによる溶解パルプ1 kgとフルフラール0.01 kgの生産では,地球温暖化ポテンシャル(GWP100)のCO2換算で-1.218 kg,酸性化ポテンシャル(AP)のSO2換算で-0.006 kg,栄養化ポテンシャル(EP)のPO43-換算で-0.002 kg,人間毒性ポテンシャル(HTP)の1,4-DB換算で-0.054 kg,CEDとして1.887 MJが発生した。経済評価の結果,EFBから溶解パルプ1 kgを生産した場合,LCCによる収益は71.11円,15年後の技術経済評価シミュレーションによる収益は54.44円となった。このように,EFBを原料とした溶解パルプとフルフラールの共同生産の評価結果から,廃棄物のバイオリファイナリープロセスによって付加価値の高い製品を製造することは,経済性,環境性,エネルギー面でメリットが高いと考えられる。

特集:アジアバイオマス科学会議Ⅰ(ノート)
  • Michino HASHIZUME, Chinnathan AREEPRASERT, Koji TOKIMATSU
    原稿種別: Short Paper
    2020 年 99 巻 9 号 p. 153-157
    発行日: 2020/09/20
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    東南アジアでは現在も急激な経済発展に伴い,紙の消費量は増加し続けている。この動向は,衛生意識の変化による需要増加,脱プラスチック運動,中国の古紙輸入規制の影響による業界情勢の変化に伴い,東南アジアにおいて今後も続いていくことが予想される。製紙産業では,廃棄物のほとんどは焼却処理され,通常工場内部の電力として利用される。古紙の使用量増加などにより,紙スラジの排出量は増えているが,一方で紙スラジは含水率が高いために,固形燃料として課題がある。この課題に対し,水熱処理技術が有効であることが先行研究により明らかにされている。水熱処理とは,バイオマスの前処理技術の一つで,高温高圧の水蒸気と化合物の加水分解により,試料の燃料としての品質を向上させる機能を持つ。高温高圧な水蒸気のみを要するため,途上国に適したシンプルな技術である。また,脱水能力も同時に向上する。本研究でははタイにおける製紙工場を想定し,紙スラジの内部発電利用について,水熱処理を用いた際も含めて,CO2排出量を求め,環境影響を評価した。結果として,内部設備を有するという条件だけでは,内部設備を持たないものと比較して,環境影響が軽減できていなかった。しかし,紙スラジを全量利用した際,水熱処理を施し,80 t/h以下の処理容量のボイラーを用いた際,環境影響が軽減されることが分かった。

ノート
  • 隈部 和弘, 服部 航希, 千嶋 将史, 守富 寛
    原稿種別: ノート
    2020 年 99 巻 9 号 p. 158-164
    発行日: 2020/09/20
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    下水汚泥堆肥化乾燥および炭化技術を用いた新しい省エネルギー汚泥処理システムにおける脱硫・脱臭技術を開発するために,市販の熱力学平衡計算ソフトウェアおよびラボスケール固定層反応器を用いて,SO2およびNH3ガスの汚泥炭化物への吸着挙動を検討した。SO2およびNH3の中和反応(SO2 + 2NH3 + H2O + 1/2O2 = (NH4)2SO4)のエンタルピー変化は,低温ほど低くなった。2SO2,4NH3,2H2O,O2の熱力学平衡計算は,0-200℃においては固相の(NH4)2SO4が生成する結果を示した。ガス賦活した炭化物のガス吸着量は賦活無し炭化物より多く,SO2およびNH3ガスの汚泥炭化物への空間時間が長いほど,ガス吸着量が増加した。NH3/SO2ガスモル比が硫安生成の化学量論モル比である2の場合,SO2およびNH3ガスの気相反応率および汚泥炭化物へのガス吸着量が高かった。

ゲストエディタ(特集:アジアバイオマス科学会議)
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