2020 年 99 巻 9 号 p. 136-142
本研究は,環境負荷低減及び燃料電池の普及を勘案し,バイオマス原料を間接熱分解により生産されるバイオ水素の精製に着目した。バイオマス原料からの熱的処理により合成される生成ガスには,H2S,HCl 及びNH3などの不純物が含まれ,これらの不純物は,最終製品となる水素燃料が供給される燃料電池の性能を著しく低下させる。一方で,不純物を除去させる精製過程について,LCA(ライフサイクルアセスメント)視点により検討した場合,精製に伴う間接的なエネルギー投入だけでなく吸着材の環境負荷も大きな影響を与える。これらの緩和策を検討した場合,繰り返し利用が可能な吸着材の利用,もしくは,繰り返し使用ができない化学吸着であっても天然素材による吸着材の利用が候補となろう。したがって,本研究では,NH3の吸着性能に焦点を当て,人工吸着材であるHAS-Clay(Hydroxyl Aluminum Silicate Clay)とアロフェンを含む鹿沼土の2種類の吸着材に着目した。この2つの吸着材の性能を実験的に評価し,最大吸着量を評価した結果,HAS-Clayでは2.90 g NH3/100 gとなり,鹿沼土では2.02 g NH3/100 gとなった。また,これらの性能結果をもとに,LCA指標である地球温暖化指標及び資源枯渇性指標を検討した結果,いずれも鹿沼土の方が環境負荷低減につながることが示唆された。