抄録
多層プリント配線板用内層銅の粗化処理として一般に用いられるブラウンあるいはブラックオキサイド処理においては, 耐薬品性に劣ることに起因し, プロセス溶液による内層ランド部での粗化処理層の溶失 (局部的なディラミネーション) , いわゆるピンクリング現象という重大な欠陥が存在している。今回, 我々は耐薬品性に優れた粗化処理について, 内層銅の粗化処理を予備整面処理が終了した段階にある銅張積層板に適用する多層プリント配線板の製造プロセスにおいては, 電解粗化処理の適用も可能であるとの視点から研究を進め, T4B-II添加剤およびクエン酸アンモニウムまたはトリエタノールアミンを添加した弱酸性硫酸銅浴から成るT5B-S電解粗化処理浴 (弊社浴No.) を開発した。この浴から析出形成する粗化処理層は, 赤褐色ないし濃褐色の緻密微細な樹枝状銅からなり, FR-4グレードの基材に対し, 1.3kgf/cmレベルの接着力を示した。また, 50vol%HCl水溶液, 20wt%H2SO4水溶液, 無電解めっき液に対する浸漬試験においても優れた耐食性を示し, 80~120分間浸漬後もピンクリング現象はまったく起こらなかった。