抄録
近年, 電子機器の小型化, 高密度化, 高性能化に伴い, プリント配線板の穴あけが小径化してきている。しかし, この穴あけには技術的に難しい点, 不明な点が数多く残されている。基板穴あけ時に問題となるものに, スミアの発生, 穴内壁粗さ, 工具寿命などがあげられる。また, 普通径 (φ0.8~φ1.2mm) のドリルによる穴あけと違い, 小径 (φ0.3~φ0.5mm) ドリルによる穴あけではドリルの強度低下や切りくず排出性の難しさから, ドリルの折損, ドリル食いつき側・貫通側の穴位置精度, 穴の曲がりが最近新たな問題となってきている。そこで本報告では, 穴の曲がりの性質をつかむため, 2, 3の切削条件に対し穴位置精度に関する調査および検討を行った。さらに, 曲がりを抑制するために振動穴あけおよびドリル先端にシンニングを施したドリルによる穴あけを提案し実験を行った。本研究によって得られた結果は以下の通りである。
1) 穴の曲がりの量は工具磨耗に影響される。しかし, 食いつき側の穴位置精度にはさほど影響されない。
2) 穴の曲がりは加工深さに伴って大きくなり, 曲がりの方向は規則性を持たない。
3) 振動穴あけ法は, ドリルの曲がりを抑制する効果がある。しかし, 食いつき側の穴位置精度の向上にはさほど効果を示さなかった。また, 装置の改良と振動条件, 切削条件などを検討することにより, 高精度の穴あけが期待できる。
4) シンニングドリルによる穴あけは, ドリルの曲がりを抑制する効果がある。しかし, 食いつき側の穴位置精度向上にはまったく効果がなかった。