国際教育
Online ISSN : 2434-0898
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体験的学習の教育的意義(示唆)
グローバル教育の視点から
石森 広美
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 24 巻 p. 1-17

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抄録

 本稿は、体験的学習の有効性について、グローバル時代の教育のあり方を考慮しつつ、カリキュラム設計やアセスメントの観点から探究するものである。変化の激しいグローバル社会においては、学習者が自身の学習をアセスし管理しながら学び続ける力や、しなやかな思考力等多様なスキルや能力が必要となる。こうした状況においては、以前からグローバル教育界で体験的学習や参加型学習の重要性が指摘されてきたように、自らが何かを発見したり、「気づき」を得たりする体験的学習はいっそう重要性を増す。そこで本研究では、スーパーグローバルハイスクールにおいて実施されている体験的学習に取り組んだ高校生4名(2017年8月にシンガポールで行われた国際学会に参加し自らの課題研究をポスター発表した生徒)を対象とし、体験的学習の教育的意義について検証した。自己アセスメントやグループインタビューを通した彼らの語りや振り返りを分析し、生徒たちの学びや気づき、また教育学への示唆や成果等をカリキュラム設計やアセスメントの観点から明らかにした。
 本研究により、体験的学習を通した学びの向上は、次の3要素によって成否が左右されることがわかった。1)学習者(生徒)自身による自らの学びに対する積極的かつ責任ある関与、2)自己アセスメントとフィードバックを通した自らの成長と克服すべき課題についての十分な認識、3)学習者(生徒)の学びを促進させ達成を促すための十分に意図された教育方法、である。
 カリキュラム設計において、学習目標とアセスメントともに体験的学習が一連の学習プロセスの中に位置づけられ実践されたとき、体験的学習は、生徒がインプットからアウトプットへと変換する場、すなわち学校で獲得した知識を現実の文脈で実際に活用することと通して自身の学びを活性化し、さらなる成長のサイクルを生成する機能を果たしている。この学習過程において、生徒は自分自身の学びを振り返り、分析し、フィードバックをし、現在できることと次の段階に進むにあたっての自身の課題を見出す。体験的学習が学習者自身の学習のサイクルを作動させ、教育方法として機能させる役割を果たす(図1)。
 かつての「総合的な学習の時間」においても体験的学習が奨励されたが、断片的な体験や経験に終わっていた。体験的学習は、学習目標を達成させるために設計された学習プロセスの中に意図的に位置づけられ、学習者に適切に提供され、運用され、また学習者自身が自己の学びの軌跡を把握したときに、学習者の学びを促す教育効果が生起する。この意味において、体験的学習は学んだことを実際の場で活用する場また方法として機能させることが可能である。

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