2017 年 1 巻 1 号 p. 123-128
短歌や短詩を暗号の視点で読み解こうとするとき,多くは折り句等の転置式暗号の視点でなされる。本稿では,短歌や短詩を数理科学的な暗号の視座で眺め,その基底としてシャノンの定義した判別距離を用いた。ここでは,まず齊藤史の作品とその英訳を考察材料としてとりあげた。その中で,短詩の解釈過程から,創作「鍵」は「感性」などであり,解釈(解読)「鍵」は「作者の「作者の背景や季語」等であることを述べ,齊藤史の場合,英文としての判別距離は約90 文字であると類推する。他にリルケの詩や松尾芭蕉の俳句でも同様の考察を試み,理解できるほどよい判別距離と暗号との関係から短歌・短詩・俳句の解釈(解読)可能性を論じる。