一般に花見の場所といえば, オープンスペースに積極的にサクラを植栽して作られた都市型が普通であるが, それとは別に, 二次林内に成立したヤマザクラの群生地に原型をもつ里山型があると思われる。本論では東北地方の調査旅行日誌をまとめた, 江戸時代の「菅江真澄遊覧記」をとりあげ, 記録されているサクラ群生地の立地環境を明らかにするとともに, 現在, 大阪近郊の山林に見られるサクラ群生地の立地的, あるいは植生的特性などを分析することによって, サクラ群生地の成立には, 人為的干渉-とくに保全指向をもった-が大きくかかわっているのではないかと推論した。