1990 年 54 巻 5 号 p. 215-220
滞在の長期化が目論まれる観光地やリゾート地では, 自然環境の活用やそれとの共生が大きな課題の一つである。近世後期から明治期を中心とする温泉地では, 空間構成そして滞在活動の両面で豊かな自然との接触が見られた。そこで本研究は, 温泉地の成立基盤としての地形・水系構造と集落の空間構造との関係について検討を行った。具体的には, 地図や絵図, 地誌などをもとに, 地形 (傾斜, 背後の山の概形, 微地形) および水系 (その有無, 規模, 方向性) と, 主要社寺の立地および繁華街路パターンとの関係について調査・分析した。その結果, 空間の方向性という点で, 両者が深く関わりあっていることが明らかとなった。