1990 年 54 巻 5 号 p. 96-101
1980年代にはいって新たな展開を模索しはじめたアメリカ合衆国のランドスケープデザインに関して, その背景をなすものとして, 環境芸術, 特にアースワークの作品群と作家の主張を位置づける。広大な風景の中での空間とスケールの表現, 人間の知覚と行動を媒体とした作品の完結性, 生態学的倫理と制作を通じて土地改良を目指す態度のあいだに生起する葛藤, さらには制作のプロセスそのものを作品化する試み, 以上4つの側面からその潜在的影響を考察することができる。ランドスケープアーキテクトによる試行的なデザインには, こうした潜在的影響のもとで, 芸術家の制作に社会性を付与してゆこうという意識が内包されている。