江戸のまちにおける写し霊場 (33ヶ所) を取り上げ, 札所番号・景観類似・巡拝域などについて考察した結果, 本尊が観音である寺社のネットワークであること, 本西国との類似性を意識した演出法の存在, 江戸全域を巡るものと地域的に限られたものに分かれること, 都市像の形成を促す役割を持っていたことなどを示した。江戸西国三十三所 (上野王子駒込辺) の『案内記』を分節化し, 御詠歌が本西国連想の媒介であったこと, 景観的視点が重視されていたことを示すとともに, 現地景観体験と本西国の景観を連想する体験とが重なって成立しており, 江戸における写し霊場の鑑賞構造が, 虚実が交錯する中で部分的全体性を体得するものであったことを示唆した。