近年, 里山に生息する種の保護手法が課題となっている。保護には種指定のみならず, 生息に必要な環境要素が維持されてきた要因を分析し, 時代の変化に対応した新たな維持管理体系と, それを支える社会システムの構築という「動態的な保護手法」の導入が必要である。本研究では里地の変化による影響を最も受けやすい小水路に生息する天然記念物ミヤコタナゴとその生息地をとりあげ, 生息に必要な環境を維持してきた管理体系の変遷を明らかにした。水路と溜池の維持管理が継続的に行われてきたことと周囲の落葉広葉樹林からの湧水とが生息環境を支えてきたことが明らかとなり, これらの維持管理の作業を代替する仕組み作りが急務であることが示唆された。