腸内細菌学雑誌
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腸内糖代謝と腸内細菌
渡部 恂子
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2005 年 19 巻 3 号 p. 169-177

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抄録

ヒトと腸内細菌とのかかわりは100万年以上におよび,その間ヒトの腸内で優勢を占めるこのとのできた細菌は腸内の嫌気的条件に適応し,食物残さを良く利用できた細菌類である.腸内菌はヒトが消化できなかった様々な食物残さを分解し,その代謝産物がまた吸収され,ヒトに影響を及ぼすことである.ヒトの消化酵素では消化されない食物成分,主に難消化性糖質は大腸内の細菌の重要なエサになる.腸内菌の糖代謝によって生成される短鎖有機酸はさまざまな機能を生体に及ぼすことが証明されつつある.我々は先に,健康成人の糞便中の水分含量と酢酸,酪酸量との相関,ならびにp-クレゾール量との逆相関を報告したが,インドールとの逆相関,および腸内細菌叢との直接的な相関は見出せなかった.今回,インビトロでの試験系で個人別糞便サンプルの糖代謝と腐敗産物産生との関連を明らかにし,腸内フローラの違いによる影響について検討した.糖質としてイヌリン,アラビノガラクタンおよびスタキオースを用いた.利用できる糖質があると糞便培養液中に生成される腐敗産物量は減少した.また,同一の糞便培養でも糖の種類により生成される有機酸が異なり,生成量の差も認められた.特にアラビノガラクタンを添加した時,糞便サンプルによってはインドールの生成量が時間と伴に減少する例があり,糞便中の水分とインドールの間に逆相関がなかったことの要因と考えられる.このように糞便培養で腸内菌の糖代謝を調べてみると糖の種類や菌叢によりかなり違いが認められるが実際の糞便で有機酸を分析すると腸管からの吸収等が原因で大きな差異は認められない.そこで,糞便中のコハク酸や乳酸の含量が多い特殊な事例の糞便内細菌叢,有機酸ならびに腐敗産物の分析値から腸管内での細菌増殖のダイナミクスについて考察し,糞便中でのそれらの分析値の持つ意味を検討した.

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© 2005 (公財)日本ビフィズス菌センター
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