腸内細菌学雑誌
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Helicobacter pyloriの病原性
神谷 茂
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2006 年 20 巻 4 号 p. 309-319

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抄録
Helicobacter pyloriは胃粘膜に持続感染するグラム陰性らせん状細菌である. H. pyloriは急性および慢性胃炎を惹起するとともに,消化性潰瘍の再発因子および治癒遷延因子として作用する.また,本菌感染と胃癌や胃MALTリンパ腫との関連性が推定されている. H. pyloriの病原因子は細菌側因子と宿主側因子に分けられる.細菌側病原因子としてウレアーゼ,アドヘジン,VacAサイトトキシン,CagA, cagPAI,OipA,NapA,熱ショック蛋白などが挙げられる.IV型分泌機構を介したCagAの宿主細胞内移入は細胞機能に大きな変化を与え,病態発現に重要な役割を演じる.宿主側病原因子として胃上皮細胞や宿主免疫担当細胞が産生するサイトカイン(TNF α,IL-6, IL-8など),活性酸素,一酸化窒素などが挙げられる.さらに H. pyloriと胃十二指腸以外の疾患(特発性血小板減少性紫斑病,慢性蕁麻疹,冠動脈疾患など)との関連性が報告され,本菌の除菌による上記疾患の改善化が報告されている.
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© 2006 (公財)日本ビフィズス菌センター
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