抄録
我々がエクオール産生乳酸菌としてヒト腸内より単離したラクトコッカス20-92株は,Lactococcus garvieae(以下Lc. garvieae)と同定された.ラクトコッカス20-92株の安全性評価のために,Lc. garvieaeの食歴およびヒト腸内常在性について検討した.イタリアの伝統的チーズおよび日本人の健常人女性より採取した糞便からのLc. garvieae検出は,Lc. garvieaeに特異的なPCRプライマーを用いたRT-PCR法あるいはリアルタイムPCR法により行った.イタリアおよび日本で入手したイタリア産の伝統的なチーズ7種類(トーマ・ピエモンテーゼ,ラスケーラ,ブラ・ドゥーロ,ブラ・テネーロ,ムラッツアーノ,カステルマーニョ,ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ),21検体にLc. garvieaeが検出された.また,ヒト糞便サンプル135検体中,49検体にLc. garvieaeが検出された(検出率36.3%).本研究結果より,Lc. garvieaeが伝統的に食されてきたチーズ中に存在していることが確認できたことから,その食歴を明らかにすることができた.さらに,健常人の腸内に常在していることも明らかとなり,Lc. garvieaeの安全性は高いものと考えられた.したがって,ヒト腸内由来のラクトコッカス20-92株も,同様に安全性の高い菌株であることが示唆され,今後,食品としての利用が可能と考えられた.