抄録
1984年に出版された「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」は細菌分類学における膨大な知見を包括的にまとめたものであり,細菌分類学の分野で最も権威を認められている著書の一つである.しかし,近年の分子生物学的な細菌学の進歩により16S rRNAをコードする遺伝子(16S rDNA)の塩基配列の解読が急速に進み,16S rDNAの塩基配列を基とした系統分類が用いられるようになった結果,1984年のManual出版の時には近縁と考えられていた菌がまったく異なるグループに分類されることもしばしば見受けられる.「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」は現在第2版が出版されつつあるところではあるが,本稿では消化管内の菌叢として重要な種が多く含まれる偏性嫌気性グラム陰性菌について,1984年の第1版に記載された種や属が現在の分類体系ではどのように分類されているかを解説した.