腸内細菌学雑誌
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総  説
腸内細菌・プロバイオティクスによる炎症性腸疾患の制御
大草 敏史
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2009 年 23 巻 3 号 p. 193-201

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抄録

炎症性腸疾患(IBD)は,狭義には原因不明の小腸,大腸の炎症性疾患,すなわち,潰瘍性大腸炎とクローン病をさしている.両者ともに,我が国では,欧米に比べ患者数は1/5-1/10と少ないが,近年になり,その患者数は年10%弱と増加しつづけ問題となっている.また,IBDは,従来は自己免疫疾患と言われていたが,最近の研究の進歩により,その炎症は腸内細菌によって引き起こされていると考えられるようになってきた.また,炎症性腸炎を自然発症するIL-10ノックアウトマウスや我々の開発したDSS腸炎で,乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティクスが腸炎発症を予防し,発症後の腸炎を改善することが報告されてから,治療法の1つとして,プロバイオティクスの有用性が注目されてきた.さらに,最近では,乳酸菌に代表されるプロバイオティクスが潰瘍性大腸炎やクローン病などに実際に投与され,潰瘍性大腸炎では有効で,クローン病では効果がないといったという報告が多く出されている.本稿では,それらの最新の報告を中心に,プロバイオティクスによるIBDの治療の概括を述べる.

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© 2009 (公財)日本ビフィズス菌センター
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