腸内細菌学雑誌
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総 説<特集:腸内細菌とがんとの関連,その最新情報>
胃がんと腸内細菌
下山 克飯野 勢
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2020 年 34 巻 3 号 p. 159-163

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抄録

近年,腸内細菌と種々の悪性疾患との関連が研究されるようになった.胃がんは世界で最も死亡者が多い癌のひとつであるが,Helicobacter pylori感染という明確な原因が存在することから,消化管マイクロビオータと胃がんの関連についての研究は多くはない.H. pylori感染者は未感染者に比して腸内細菌の多様性が高いとされる.また,胃粘膜萎縮が高度になった場合,腸上皮化生をみとめる場合には腸内細菌のStreptococcus属の割合が増加する.すなわち,腸内細菌のStreptococcus属の増加は,分化型胃癌のリスクが高い胃粘膜に関連した変化である可能性が示唆される.また,胃内マイクロビオータの多様性も萎縮性胃炎,腸上皮化生が進展し胃がんリスクが高い状態になるにつれて低下し,さらに,胃がん患者の胃内マイクロビオータの特徴として,口腔内に存在するStreptococcus,Prevotellaなどの細菌の割合が増加することも示されている.これらの細菌の増加は大腸がん患者の腸内細菌でも知られている変化であり,胃粘膜萎縮の進展が胃のみならず大腸の発がんにも影響する可能性を示唆するものである.

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© 2020 (公財)腸内細菌学会
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