腸内細菌学雑誌
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総 説<特集:腸内細菌とがんとの関連,その最新情報>
口腔がんと細菌・真菌・ウイルス
中西 康大田村 優志高橋 美穂唐木田 一成坂本 春生
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2020 年 34 巻 4 号 p. 197-208

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抄録

口腔内をはじめ,生体内には多くの細菌が存在しており,細菌同士同菌種・異菌種問わず,細菌間コミュニケーションをしている.近年細菌は,生体に様々な影響を与えていることが研究されてきている.胃がんのピロリ菌に代表されるように,細菌が全身の「がん」に関与することが研究されるようになってきた.口腔がんにおいても,細菌の関与について研究されてきている.細菌が「がん」に関与する際は,大きく分けて三つの関与方法があると考えられている.一つ目は,「慢性炎症による刺激」である.慢性炎症による持続的な炎症性メディエーターなどの放出は,細胞増殖や変異誘発,がん遺伝子の活性化などを引き起こす.細胞の増殖に影響するということは,がん細胞の増殖にも影響することを意味する.二つ目は,「アポトーシスの阻害」である.アポトーシスの阻害により,細胞の長期生存が可能になる.三つ目は細菌が「発がん性」物質の産生することによる,直接的ながん化への関与になる.このレビューでは,Fusobacterium nucleatum,Prophyromonas gingivalis,および,そのほかの微生物Candida,virusesが口腔がんにどう影響するかについて概説する.

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© 2020 (公財)腸内細菌学会
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