腸内細菌学雑誌
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刀根早生柿由来乳酸菌含有サプリメントの長期経口摂取が腸内フローラに与える影響
松永 渉後藤 章暢
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2021 年 35 巻 3 号 p. 165-172

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抄録

ヒトの腸内フローラは健康維持に重要な役割を果たしているが,日本では近年,様々な理由から腸内フローラの異常(ディスバイオーシス)が増えているとされ,腸内フローラの改善を謳う乳酸菌サプリメントが数多く販売されている.ディスバイオーシスの改善には,「生きた乳酸菌」を腸に送ることが効率的だと考えられており,「植物性乳酸菌」と俗称される一部の乳酸菌群が,消化管の過酷な環境に耐えて腸に到達すると期待され注目されている.本研究では,刀根早生種の柿より分離された乳酸菌を含むサプリメントMP-1の長期経口摂取がマウスの腸内細菌叢に与える影響を検討した.実験期間は28日で,通常の飼料とともにタブレット状に成型したMP-1,もしくはサプリメント成分を含まないタブレットを与えた実験群とコントロール群,および通常の飼料のみで飼育した群それぞれで,実験開始前後の糞中細菌叢構成を比較したところ,MP-1摂取群では,10匹中8匹の糞中より実験開始前には検出されなかった乳酸菌が検出される一方,在来の乳酸菌のピーク面積比の低下とバクテロイデス属のピーク面積比の上昇が観察された.通常飼育群およびコントロール群の糞中細菌群には有意な変化は観察されなかった.このことから,サプリメントMP-1の長期摂取は,マウスの腸内フローラに有意な影響を与えていることが確認された.

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© 2021 (公財)腸内細菌学会
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