腸内細菌学雑誌
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総 説
腸内細菌と制御性T細胞
香山 尚子
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2022 年 36 巻 4 号 p. 177-188

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抄録

病原微生物へのTh1, Th2, Th17応答は生体防御に必須であるが,過剰な炎症応答は組織恒常性維持の破綻につながる.そのため,Foxp3制御性T(Treg)細胞は,多様なメカニズムによりエフェクター応答を厳密に制御している.IPEX症候群では,Foxp3遺伝子変異にともなうFoxp3 Treg細胞の機能異常により,腸炎や自己免疫疾患が発症することより,Foxp3 Treg細胞が生体恒常性維持に極めて重要であることが示唆される.ヒトの腸管組織には40兆個も細菌が存在する.これまでに,腸内細菌の代謝産物や構成成分がFoxp3 Treg細胞の分化や機能を制御し,腸管恒常性維持に寄与することが報告されている.細菌叢の乱れが炎症性疾患,自己免疫疾患,神経系疾患に関与することが示唆されており,腸内細菌によるFoxp3 Treg細胞恒常性維持機構のさらなる解明が,多様な疾患の新規治療法開発につながることが期待される.

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© 2022 (公財)腸内細菌学会
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