腸内微生物叢の破綻は,感染症だけでなく生活習慣病や癌など様々な疾患の発症や増悪に影響する.よって,腸内微生物叢でおこる微生物間,および微生物と宿主の相互作用を理解することはそれらの疾患の予防や治療に繋がる.一般的な基礎研究では,抗菌薬で処理されたマウスやノトバイオートマウスが用いられるが費用や倫理的な問題が生じる.本稿では,代替動物としてカイコを利用した基礎研究のなかで疾患モデルにフォーカスを当てて概説する.無脊椎動物であるカイコは倫理的な問題が少ないので多数の個体を用いた実験が可能である.カイコを実験動物として感染症および糖尿病の病態モデルが確立されている.これらのカイコの病態モデルを利用して感染症や糖尿病に対する予防効果が期待できる乳酸菌が同定されており,その実験動物としての有用性に関して紹介する.