腸内細菌やプロバイオティクスによる疾患や健康の制御に向けたアプローチが盛んに試みられる一方,腸内細菌と宿主間の相互作用の分子的実体には未解明な点も多い.線虫Caenorhabditis elegans (C. elegans)は,3つのノーベル賞研究をはじめとして,さまざまな生命現象の発見において重要な役割を果たしてきたモデル生物の一つであるが,腸内細菌研究においても例外ではない.乳酸桿菌やビフィズス菌による線虫の寿命延伸作用が報告されて以降,哺乳動物実験の削減・廃止の動きも相まって,線虫を代替モデルとしたプロバイオティクスや有用菌の生体作用に関する知見が急速に蓄積している.線虫固有の腸内細菌叢についての理解も進むなか,腸内細菌叢―宿主間相互作用の解明に向けて線虫モデルの活用がますます期待される.