腸内細菌学雑誌
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総 説
ショウジョウバエを利用した腸内細菌研究
堀 亜紀倉石 貴透
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2024 年 38 巻 4 号 p. 203-217

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抄録

遺伝学的手法が駆使できるショウジョウバエは,宿主と微生物の共生関係を理解するうえで有用なモデルである.本総説では,ショウジョウバエ腸内細菌叢の維持機構,生理的役割,およびディスバイオーシスについて最近の知見を概説する.ショウジョウバエの腸内細菌叢は,食餌からの継続的な微生物の摂取と腸内での定着・増殖のバランスにより維持されており,ROS産生経路や抗菌ペプチドの特異性により,病原微生物と常在菌が区別されている.腸内細菌は,ショウジョウバエの生理機能に多大な影響を与えており,幼虫期では成長促進効果が報告されているほか,成虫においても多彩な機能を発揮している.そのため,加齢や疾患などによって腸内細菌叢の構成に異常をきたすと,腸管の炎症や腸管バリア機能の低下が生じて寿命短縮につながる.さらに,神経変性疾患モデルのショウジョウバエにおいては,腸内細菌叢の異常が病態の悪化を引き起こすことも示唆されている.今後,ショウジョウバエを用いた腸内細菌叢研究の進展により,宿主と微生物の相互作用の基本的メカニズムが明らかになることが期待される.

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© 2024 (公財)腸内細菌学会
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