2025 年 39 巻 4 号 p. 237-242
宿主は,健康維持に必要不可欠な存在である腸内細菌叢を制御するため免疫グロブリンA(Immunoglobulin A: IgA)を中心とした獲得免疫系を発達させてきた.腸内細菌に対して特異的に結合する高親和性のIgAの産生には,パイエル板における濾胞性ヘルパーT細胞(T follicular helper cell: TFH細胞)による胚中心B細胞の選択を必要とする.Foxp3+ T細胞,およびTFH細胞に発現するPD-1によってTFH細胞の数および機能が調節されることでパイエル板の胚中心B細胞の選択過程が制御され,腸内細菌叢の制御に適切なIgAが産生される.その結果,腸内細菌叢のバランスが維持され宿主と腸内細菌叢の共生関係が維持される.一方で,腸内細菌叢の長期的な刺激は胚中心B細胞の細胞老化を誘導するストレスとなる.腸内細菌叢が,B細胞に細胞老化が誘導しIgAの産生と多様性の低下による腸内細菌叢の制御不全が引き起こすことで加齢に伴う腸内細菌叢のバランスの乱れの一因となる.したがって,宿主の生体恒常性を維持するうえで重要な役割を持つ腸内細菌叢は,老化を促進する生体ストレスの一つとなりうることが明らかとなった.