2026 年 40 巻 3 号 p. 159-162
近年の腸内細菌研究の進展により,腸内細菌が生体の恒常性維持に深く関与していることが科学的に明らかとなってきた.特に,腸内細菌の構成や機能は食事をはじめとする多様な因子により大きく変化し,日々の食事はその最も重要な調節因子の一つとして注目されている.また,脂肪酸をリガンドとする細胞膜上受容体(G-protein coupled receptor; GPCRs)の同定により,食事由来成分や腸内細菌が産生する食由来代謝物が,単なる栄養素に留まらず,宿主の代謝や免疫応答を制御するシグナル分子として機能することが示されている.我々はこれまでに,食由来腸内細菌代謝物がGPCRsを介して肥満や糖尿病などの代謝性疾患に関与すること,さらに,腸内細菌間の相互作用により短鎖脂肪酸の産生が促進され,宿主のエネルギー代謝が改善されることを明らかにした.これらの知見は,腸内細菌を介した食と健康の関係を再認識させるものであり,近年では,活性本体としての食由来腸内細菌代謝物そのものを摂取する概念も注目されている.今後,これら食由来腸内細菌代謝物と標的受容体の同定・機能解析が進むことで,代謝性疾患や免疫関連疾患の新たな予防・治療法の開発につながることが期待される.