抄録
本研究では, 4G-β-galactosylsucrose (lactosucrose: LS) がビフィズス菌増殖因子として生体に及ぼす影響を検討する目的で, 糞便培養試験ならびにヒトボランティア試験を行った.糞便培養試験では, LS (98%純度) 30mgを含む糞便培養液 (0 .2gのヒト新鮮糞便を含む) を嫌気条件下で9時間培養し, 培養液中の短鎖脂肪酸含量, pHおよびBifidobacterium, Eubacterium, Bacteroidaceaeの経時変化を追跡した.LSの添加では, 培養液中の乳酸, 酢酸, プロピオン酸, 酪酸, 吉草酸の各含量が増加し, 培養液のpHは著しく低下した.また, 培養液中のBifzdobacteriumの菌数の増加とBacteroidaceae, Eubacteriumの菌数の著しい減少が認められた.ヒトボランティア試験では, 健常成人9名に0.36g/kg body weight/dayのLS50P (LSを51%含む) を3週間摂取させ, 腸内細菌叢, 糞便短鎖脂肪酸含量, 便の性状および排便感に及ぼす影響を検討した.その結果,(1) LS50Pの摂取により, Bifidobacteriumの菌数ならびに占有率は有意に増加した.一方, Bacteroidaceaeの菌数は減少傾向を示し, 同占有率は有意に減少した.(2) 便重量は, LS50Pの摂取により増加傾向を示した.また, 排便感の改善効果が認められた.(3) LS50Pの摂取は, 便の水分含量およびpHに顕著な影響を及ぼさなかった.(4) 糞便の短鎖脂肪酸含量は, LS50Pの摂取14日後に有意に減少した.以上の成績から, LSはビフィズス菌の選択的な増殖因子であることが示された.さらに, LSの摂取は, 便の重量を増加させ, 排便感を改善させることから, 便秘の改善に寄与することが推察された.