抄録
ラクチトールの腸内細菌に対する作用をin vitroおよびin vivoの系でラクツロースと比較検討した.Ih vitroの系では, 両薬物のヒト由来腸内細菌 (11菌属, 35菌種, 48菌株) による資化性を48時間培養後の培地のpHを測定することにより検討した.ラクチトールは48菌株中15菌株に資化されたのに対し, ラクツロースは37菌株に資化された.ラクチトールは乳酸産生菌であるBifidobacteriumやLactobacillusには比較的よく利用され, BacteroidesやClostridiumには利用されにくかった.また, C.perfringensはラクツロースを資化したが, ラクチトールを資化しなかった.In vivoの系においては, ラットに薬物を7.5日間反復経口投与して盲腸内容物の細菌叢に対する作用を検討した.ラクチトール投与により, ラクツロースの場合とほぼ類似した腸内細菌叢の変化が観察された.ラクチトール3g/kg/日群でBifidobacteriumの増加, 10g/kg/日群でenterobacteriaceae, Streptococcus, Bifidobacteriumおよびbacteroidaceaeの増加が観察され, ラクツロース3g/kg/日群でBifidobacterium, Streptococcusの増加, 10g/kg/日群でenterobacteriaceae, StreptococcusおよびBifidobacteriumの増加が観察された.とくに, 両薬物ともBifidobacteriumを顕著に増加させた.一方, C. perfringensはラクチトール投与群では検出されなかったのに対し, ラクツロース10g/kg/日群では8例中3例に検出された.