抄録
プロバイオティクスとしての特性の一つである菌の消化管内生残性を, 飲用-糞便からの回収実験で迅速, 正確に調べるために, 選択培地を作製し, さらにrandomly amplified polymorphic DNA-PCR法 (RAPD-PCR法) を導入した.被験者は健康成人男子8名で, 飲用開始1週間前から発酵乳製品の摂取を控え, その後3日間, 毎昼食後Bifidobacterium breve ヤクルト株を含む発酵乳製品 (ミルミルS) を100ml飲用した.飲用初日の早朝便を飲用前, 最後の飲用の翌朝便を飲用後の便とし, 糞便中のB. breveヤクルト株を選択培地を用いて検出し, RAPD法により投与菌であることの確認を行った.選択培地上の投与菌とそれ以外の菌は, ほとんどの場合コロニー性状によって容易に区別できたが, RAPD法により明確に識別できた.飲用前の便からは, 8例中5例ではB. breveヤクルト株は検出されず, また検出された3例での菌数は糞便1g当たり平均で103.7と低かった.それに対し, 飲用後の便からはすべての検体からB. breveヤクルト株が検出され, その菌数は糞便1g当たり107.18±0.83であった.RAPD-PCR法は迅速, かっ正確な菌株識別法であり, またこの方法を選択培地と併用することでB. breveヤクルト株は高い消化管内生残性を示すことが確認された.