2014 年 65 巻 2 号 p. 61-69
確率不等式は,必ずしも同一でない母集団からのデータである確率変数に対して具体的な確率分布形を想定せず,期待値と分散などの限定的な情報だけに基づいて,それら確率変数の和あるいは平均に関する上側確率の上界を評価するものである.なかでも,確率変数の期待値と分散および定義域だけを所与とする場合に確率変数の上側確率の上界を与えるHoeffdingの確率不等式はその性能において優位な確率不等式として認知されている.ただし,Hoeffdingの確率不等式はその構成法においてさらに性能を向上させる可能性が存在する.そこで本研究ではとくに,確率変数の期待値と分散および定義域だけを所与とする場合に確率変数の上側確率の上界を与えるHoeffdingの確率不等式に関して考察し,異なる母集団からのデータに関する上側確率の上界評価の性能向上を実現する工夫について考察する.