2021 年 72 巻 2 号 p. 99-109
製造業者と販売業者で構成されるサプライ・チェーンにおける各種の管理問題について,多くの研究成果がみられる.これらのひとつとして,製造業者と販売業者間の契約締結に至るまでの協力ゲーム理論的アプローチに基づく交渉手順が考察されている.ただし,サプライ・チェーンにおいて,製造業者と販売業者の間で中間流通を担う卸売業者が存在することが一般的である.この観点から,製造業者,卸売業者および販売業者の3つの業者が直列に配置された直列型サプライ・チェーンにおける契約問題について考察する.ところで,製造業者と販売業者だけからなるサプライ・チェーンにおける契約問題の既存の考察において,需要量の分布が未知で,その平均と分散のみが予測値として所与である状況が考察されている.これらのことから本研究では,2つの業者からなるサプライ・チェーンでの協力ゲーム理論的アプローチに基づく交渉手順を展開し,3つの業者からなる直列型サプライ・チェーンにおいて,需要量の分布が未知で,その平均と分散のみが予測値として所与である状況での契約問題に関する合理的な交渉過程を明らかにする.この状況における交渉解を導くために,Cauchy-Schwarzの不等式に基づくdistribution free approachを適用し,3つの業者それぞれの期待利益の下界値を契約問題の交渉パラメータである卸売価格と買戻価格の関数として評価する.結果として,これらの期待利益関数を利用して,製造業者,卸売業者および販売業者の3つならびにそれ以上の業者からなる直列型サプライ・チェーンでの契約問題の協調的交渉解が導かれる.