情報メディア研究
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解説論文
阿蘭陀通詞の職階とその変遷について
原田 博二
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2003 年 2 巻 1 号 p. 45-55

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抄録

阿蘭陀通詞は,オランダ語の通訳等を主な職務とした役職であるが,同じく中国語の通訳等を主な職務とした唐通事と同様,大通詞,小通詞,稽古通詞の3職がその基本構成で,阿蘭陀通詞はその後,大通詞より諸立合通詞,御用通詞,通詞目付,大通詞助が,小通事より小通詞助,小通詞並,小通詞末席が,稽古通詞より口稽古(稽古通詞見習)などが増設されたが,それぞれの詳細,特にそれぞれの家の成立事情等には不明の部分が多かった.そこで,本論では,これらについて,諸役人帳(分限帳)や由緒書等を参考にしながら,これらの問題について考察を行ったが,その結果,阿蘭陀通詞は,大通詞,小通詞,稽古通詞の3つが基本構成であるが,時代とともに諸立合通詞以下の諸職が設けられた.その陣容は,1704年当時は6職,合計36人であったが,1750年当時は10職,合計は57人,1854年当時は,14職,合計59人,1865年当時は13職,合計は62人と増加の傾向にあった.これら諸職の増設や人員の増加については,オランダ貿易の複雑化,特に1715年以降のオランダ貿易の統制,さらには1859年の開国と,その時々に対応して,阿蘭陀通詞の職制も多様化したものと考えられるが,概して阿蘭陀通詞より唐通事の方がより複雑多岐で,諸職の増設や待遇などはこの唐通事に追従する形で行われた感は歪めないようである.

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