抄録
本研究は、日本語教師である筆者が地域のまちづくりに関わる住民と関係を築く中で、住民の外国人に対する捉え方がどのように形成され、変化していくのかを、「他者性」と「仲介」の視点から検討した事例研究である。筆者は2019 年より市民団体「まちづくりT」(仮称)に参与し、構成員の中沢さん(仮名 以下A)への二回のインタビューを行った。当初
A は外国人を「留学生・若者」や「支援すべき弱い存在」として認識していたが、外国人住民との関わりを通して、「共に暮らす隣人」として捉え直していった。この変容は、筆者とA との対話関係の中で形成され、「筆者―A―外国人住民」という二重の仲介構造をもつ省察的プロセスとして捉えられる。さらに筆者自身が、他者の変化を促す立場ではなく、住民と
ともに共生の意味を問い直し、共創的に関係を構築していく存在として自らを捉えるようになった。このような関係性は、一方向的な支援にとどまらず、相互の理解や省察が関係の中で生み出されていく過程として理解できる。
本研究は一事例に基づくものであるが、日本語教師が日々の実践を通して得た経験を生かし、対話の相手やメディエーターとして地域の場に居合わせることの重要性に着目し、仲介的に関わる日本語教師の役割とそのあり方について検討する。