日本航海学会誌
Online ISSN : 2433-0116
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水の比重變化による船の吃水變化量計算
平井 壽八
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1951 年 3 巻 p. 48-52

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抄録
吃水の變化については海上技術者は等しく大なる關心を持つて居ります。目的としては航海日誌其の他の書類に記録する爲,安全法上よりする守則の爲,淺い水路の航行に對する爲或ば風潮の壓流に對する爲等色々な事項が擧げられます。特に鑛石,石炭等のBulk cargoの受渡しに際し排水量を必要とする場合には吃水の變化量を納得出來る計算方法により檢討することによつて後始めて納得のゆく受渡しが出來るのであります。申上げる迄もなく船舶の荷物輸送上に於ては運賃の收入と辨金の支拂とが重大な關係を有して居りますが此の辨金問題につきましては絶無を期し充分な荷役をなした時でも見當違いの原因から起つた事で論爭を引き起す時がありましてChief officerとしては最も大きい頭痛の種の一つだろうと思考します。勿論運送契約上からはMate's receipt或はBill of Lading等に適當のRemarkを附ける事により辨金問題を起さない様に出來る場合もありましようが現下の状勢では例え鑛石,石炭等の如きBulk cargoと雖もSaid to Weightの如きRemarkは附されないのが實状であります。檢討すべき事項には種々あつて中には不可能な事もありますが最も重要な事は水の比重變化による吃水變化量の計算であります。現在では改良型のようにLight Conditionでは極端にBy the Sternとなつている様な船では平均吃水を算定するに當りTrimの變化によるWater plane areaの變化を考慮して正確なる排水量が算定されなければならない事は勿論ですが現場比重,殊に河港,河口港に於ける場合,比重變化による吃水變化量が加算されたか否かによつて船によつては數百噸の積載不足となつて居る場合があります。安い運賃で多額の辨金を拂つたのでは船會社は成り立つて行かない事になりますが其れ程ではなくとも海技者として正確に計算出來る容易な方法があるとすれば一人殘らず計算を實施すべきだと考えます。然し理想はそうであつても現實的には簡單にいかない方が澤山ある様です。計算に用うる公式も幾種もあり亦公式は解つていても計算に要する時間も數十分,然も出港前の繁雜,多忙な時に於ける計算は容易なことではありません。Draft surveyを業とされるSurveyorに依頼する方法はありますが,私の申述べ度い事は理論や公式に精通して居る方も,理論や公式計算等不祥の方も等しく容易に迅速に確實に數秒間で計算出來る方法を實施することにより能率的完全輸送の實を擧げることになるのではないかと思考します。
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© 1951 公益社団法人 日本航海学会
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