2021 年 72 巻 2 号 p. 43-53
本稿は、PFI事業における地球温暖化対策について、民間事業者へのインセンティブ付与の視点から考察を行ったものである。PFI事業において温室効果ガス排出量の削減に取り組むことには、財政負担の軽減と地球温暖化対策の推進という2つの意義がある。本稿では、学術研究の整理および入札資料の調査を通じて、その取り組みの実態と課題の明示を試みた。検討の結果、事業費と施設の環境性能のトレードオフが発生していること、施設の供用開始後に温室効果ガス排出量の削減に関するインセンティブが付与されていないことの2つの課題が明らかになった。その解決策として、本稿は、CO2の排出削減量を貨幣価値に換算した金額を入札価格から控除したうえで価格点評価を行うこと、事業方式をBOT方式としたうえでエネルギーコストを民間事業者に負担させるような事業スキームを採用することの2点を提案した。