地域生活学研究
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景観保全のための住民運動のあり方を考える
環境行政法学からの一考察
神山 智美
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 07 巻 p. 95-116

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抄録

第Ⅰ章では、まずもって景観保全が環境公益のひとつであることに言及し、本稿の構成を述べた。第Ⅱ章として筆者が専門とする「環境行政法学とは何か」をかいつまんで説明し、第Ⅲ章において「環境行政法学から見た景観紛争」を概括した。その視点をもって、第Ⅳ章においていささか大上段に構えたタイトルではあるが、「問題を読み解くために:環境行政法学からの提言」と題して、本件(北杜市における太陽光発電施設設置による景観破壊問題)における景観保全のための住民運動について、Ⅳ- 1: 住民らの意見表明に係る対企業の訴訟対応、およびⅣ- 2: 自治体対応(行政の立ち位置および行為規範)について整理し、Ⅳ- 3: 本件(北杜市における景観保全)における住民運動のあり方を検討した。景観は、「みんなのモノ」ではあるが、その所有形態は「他人のモノ」であることが少なくない。それを「自分たちのモノ」として大切に扱うための、地域社会における仕組みおよび仕掛け作りが求められている。その仕組みおよび仕掛けに、正当性をもたせ、かつ正義に適うものとし、それらによって「持続可能な発展」に寄与する方向に向かわせることによって発揮される「環境公益」の実現が、現代環境行政法の究極の目的である。

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