日本食生活学会誌
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研究ノート
アクアガス加熱食材の基礎的調理加工特性に関する研究 (第5報)
にんじんについて
長田 早苗殿塚 婦美子谷 武子根岸 由紀子奥崎 政美香川 芳子
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2008 年 19 巻 3 号 p. 239-246

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抄録

  AQG加熱食材の基礎的調理加工特性を明らかにすることを目的に, にんじんを用いて, AQG加熱と既存の加熱法 (茹でる, 蒸す) について実験を行い, 物性, 色調, 成分量 (総ビタミンC, カロテン, 遊離アミノ酸) について測定を行い, 官能検査と併せて検討した。結果は以下のとおりである。
1. AQG加熱の内部温度上昇は蒸し加熱と同様であった。また水分量については, 蒸し加熱よりも水分減少を抑制できた。
2. AQG加熱による色調は, a値については蒸し加熱と比較して有意に大きく, L値については蒸し加熱と茹で加熱の中間であり, それぞれ有意差が認められるが, 人の視覚では, ほとんど差を認めることはできないほどの違いであった。
3. 総ビタミンC量については, AQG加熱が最も減少が抑制された。カロテンは3つの加熱法の間に, 有意差は認められなかった。遊離アミノ酸総量については, AQG加熱では蒸し加熱および茹で加熱よりも有意に少なかったが, アルギニンを含め苦味を呈するアミノ酸類は蒸し加熱および茹で加熱と比較して有意に少なく, 甘味・旨味を呈するアラニン, アスパラギン酸およびグルタミン酸の量は茹で加熱よりは多く, 蒸し加熱よりは少なかった。
4. 皮層部では茹で加熱が最も硬く, 髄部では蒸し加熱が最も硬い結果であった。AQG加熱は, 両部位とも, 最もやわらかい傾向であった。
5. 官能検査については, 甘みの強弱や味の総合的評価および総合評価についても, AQG加熱は蒸し加熱と同等であり, 茹で加熱と比較して有意に良好な結果であった。
  本研究は, (独) 農業・生物系特定産業技術研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」の「アクアガスを用いた高品質汎用食材の新規調製技術の開発」[コンソーシアム構成 : (独) 食品総合研究所, (株) タイヨー製作所, 女子栄養大学, (株) ローズコーポレーション, (有) 梅田事務所]委託研究によって実施されたことを記し, 深謝いたします。

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© 2008 日本食生活学会
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