日本食生活学会誌
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研究ノート
特別養護老人ホームにおける咀嚼・嚥下困難者用食の物理的機能性評価
笹田 陽子笹田 陽子中舘 綾子工藤 ルミ子重田 公子鈴野 弘子石田 裕鈴木 和春樫村 修生
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2008 年 19 巻 3 号 p. 251-259

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抄録

  咀嚼・嚥下困難な高齢者に安全で簡単な調理による食事の提供を目的に, 誤嚥性肺炎の出現のないR施設で提供している嚥下ソフト食の物性を測定し, その評価を行った。
  (1) 主食の粥は温度の低下とともにゲル状となり, 舌でつぶせる, 箸でつかめるかたさとなった。
  (2) 主菜のまぐろの山かけ蒸しは, 粥とほうれん草のくずあんかけより有意にやわらかかった。
  (3) 主食, 主菜および副菜におけるかたさは, 5×103N/m2から1×104N/m2程度であり, 厚労省許可基準およびユニバーサルデザインフードの表示区分「舌でつぶせるかたさ」の基準を満足していた。
  (4) 汁物における粘度は, 4.9×104mPa⋅sから1.0×104mPa⋅sの範囲で, その平均は (2.4±1.4) ×104mPa⋅sで, この値は汁物, ピューレ状で提供する料理の指標となると考えられる。
  (5) 汁物における回転数依存指数のばらつきは小さく, 飲み込みやすい汁物であることが認められた。
  以上より, 嚥下ソフト食は, 「水やお茶が飲みにくい」レベルの多くの咀嚼・嚥下困難者に対して「舌でつぶせる」レベルのかたさ, 粘度で対応できる食事形態であることが明らかになった。
  なお, 本研究は, 平成18年度, 19年度盛岡大学研究助成により行われた。

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© 2008 日本食生活学会
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