日本食生活学会誌
Online ISSN : 1881-2368
Print ISSN : 1346-9770
ISSN-L : 1346-9770
資料
ロイシン,アルギニン,あるいはリジンの経口摂取60分後におけるマウス骨格筋,肝臓のタンパク質合成に対する影響
吉村 亮二荒木 光菊地 優子野村 秀一
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 35 巻 3 号 p. 147-154

詳細
抄録

 食事性タンパク質とアミノ酸は,mammalian target of rapamycin complex 1(mTORC1)の活性化を介してタンパク質合成を促進する。特に,ロイシンはmTORC1の強力な活性化因子であると考えられている。しかし,経口摂取したロイシンが他のアミノ酸よりもmTORC1活性化とタンパク質合成促進により効果的であるかは報告されていない。そこで,本研究では,mTORC1活性化作用が報告されているアルギニンやリジンよりもロイシンがmTORC1活性化とタンパク質合成促進により効果的であるかどうか検討した。C57BL/6Jマウスへ各アミノ酸を1.35 mg/g体重で経口投与し,タンパク質合成レベルを測定するため,アミノ酸投与30分後にピューロマイシンを腹腔内投与した。その後,採取した腓腹筋と肝臓をウェスタンブロッティング法により解析した。mTORC1の標的分子であるeukaryotic initiation factor 4E-binding protein 1および70-kDa ribosomal protein S6 kinase 1のリン酸化は,腓腹筋,肝臓の両組織においてロイシン摂取により最も増加した。しかし,タンパク質合成はロイシン摂取により腓腹筋においてのみ増加し,肝臓では増加しなかった。これらの結果は,経口摂取60分後においてロイシンがmTORC1活性化においてアルギニンやリジンより効果的であり,特定の組織におけるタンパク質合成を促進することを示唆している。そのため,本研究結果は,主にin vitroおよび非経口摂取における研究結果と,経口摂取による研究結果の間のギャップを埋めることに貢献できるものと考えられる。

著者関連情報
© 2024 日本食生活学会
前の記事 次の記事
feedback
Top